清賀手記

フェイスブック記事の忘備録です

桂春蝶独演会 於天満天神繁昌亭

  2月つごもりの昨日、桂春蝶師の独演会に出かけた。ところは天満天神繁昌亭。師から落語会に何回かお声掛け頂いてたのだが、2年ほど足を運べずにいた。今回はどうにも師の芸を味わいたくなって、チケットを取り置き頂きいそいそと出かけた次第。

  高座では本ネタの中村仲蔵をより理解できるため、中入り前の2ネタに本ネタへのフリを巧妙に埋め込んだ噺を、茶目っ気たっぷりに進めていた。
落語の内容について評するだけの筆力は私にはなくはばかられるので、本芸以外の印象について記しておきます。

一言。春蝶、ますます艶っぽくなってきたぞ。

  昨年はいろいろあってかなりの心労が押し寄せたと思うが、それが芸人としての懐をますます深くしたのではないか。加えて年齢も円熟味が増す頃に差し掛かったこともあってか、声の色艶はもとより噺の間(ま)と仕草に、初老の男にもドキッとさせられる瞬間も二度三度…またファンへの応対も、木星の如き大きな贔屓筋のみならず、私のようなイトカワの如き小惑星まで大事にして下さる。

  中入前後でモードを変えて演じている師を眺めていると、前半の噺では黄色、本ネタの中村仲蔵ではオレンジ色の雰囲気に包まれていたように感じられた。

  噺の概要は以下の如し。上方から江戸に下り、精進の末立役者にのし上がった歌舞伎役者中村仲蔵。しかし立役者としての最初の出し物では、客が弁当を食べるタイミングで、殺されるためだけに出てくる、不恰好な浪人という本意な役しか与えられず、周囲からの嫌がらせだと思い込み、大坂へ戻ろうとふて腐れる。しかし最後にその役を自分なりに演じきってからでも遅くはないという女房からの進言にどうにかその気になり、願掛けを続け、最後の日に出会ったある侍の出で立ちと仕草をヒントにその役をアレンジした仲蔵。
  しかしかつて目撃したことのないその役のあり方に、客の反応がしらけていると勘違いした仲蔵。いよいよ大坂へ宿替えをする用意を始めたところに親方からお呼びがかかり、お褒めを頂く。客の反応がなかったのは、感動してリアクションがとれなかったのだった。
この噺からは春蝶師の東京移住、そこでの噺家としての活動にどこかオーバーラップする部分が読み取れてしまうのだ。

  師から一度食事をとおっしゃって頂いているが、断酒したこともあり気後れしている私だが、やはりこの「艶に磨きがかかってきた」噺家春蝶の話を聴いてみたいと、改めて思う次第だ。

 

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春蝶師と 228


本ネタでは、周りを気にしながら眼鏡の下の水分をハンケチで拭う初老のオトコがいたそうだが、何か?

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春蝶師 2月